この映画のあらすじを書こうとすると、困ってしまいます。
普通の映画のように、起承転結のあるストーリーがありません。  
「平和」や「国際理解」といった明確な主張を前面に打ち出した映画でもありません。
桑山さんの医療活動や心のケア、紛争地や貧困地帯で生きている子どもたちの 
キラキラとした生活、紛争地の重い歴史や今なお残る戦争の爪跡など・・・。様々なシーンが 
絡み合って展開しているのですが、一つ一つのシーンに深い関連性がありません。
シーンを結びつけているのが桑山さんの音楽です。美しい歌声が川のような流れとなって、
子どもたちの命の鼓動を、生きる力を、高らかに謳いあげます。

映画専門誌「キネマ旬報」の小林光社長から、こんな感想をいただきました。
「不思議なことに、わたしは、鑑賞中に何度も微笑んでいました。淡々と事象を捉えていく
ようでいて、奥深いところにある博愛が感じられ、とても優しい気持ちにさせられました。
全編に流れる桑山さんの歌声も効果的です。包み込むような、愛情一杯の作品です。」

世界中の難民の救済に取り組んでいる国連難民高等弁務官事務所・UNHCRの駐日
事務所の方々は、「世界各地で大人たちが起こす不条理な戦争や争いが続く中、心や体に
傷を負いながらも、懸命に生きている子どもたちの生命の力が輝いています。この映画は、
日本では殆ど映画化されたことのない難民キャンプや国内避難民の子どもたちの貴重な
映像をはじめ、紛争地や被災地の子どもたちの生き様のすばらしさに“ありがとう”の
物語です。」

テレビで人気者のサイエンスプロデューサー米村でんじろうさんは、
「観終わって爽やかな風を感じました。でもみんな、ボクが日本で出会う沢山の子どもたちと
同じなんだということに気づきました。彼らに会いに行きたくなりました。子どもたちの生きる力を
信じさせてくれる映画です。」

 映画は、深沢彩子さんの優しいナレーションから始まります。
「あなたは、遠い国のことを考えたことがありますか?
地球には、200近い国があって、たくさんの人が住んでいます。
民族も、文化も、話す言葉も違いますが、みんな家族を愛し、健康で幸せな生活を
願っています。しかし、時として、そんなささやかな夢さえかなわないことがあります。」
ささやかな夢さえかなわない子どもたちは、一体どんな生活をしているのだろう?
映画は、桑山さんと旅をするという形をとりながら、8つの国や地域を回ります。

映画を構成する上で重大な要素になっているのが、今から
10数年
前、クロアチアの少女アリッサが描いた1枚の絵です。
ハートの真ん中に、“srce ranj’eno moje”(わたしの傷ついた心)
と記されています。桑山さんがこの少女の心のケアを終えて
別れる際に、大急ぎで描いてくれたのです。
 

 1990年代のはじめ、文明が発達したヨーロッパで考えられないような悲惨な戦争が
ありました。ユーゴスラビア連邦を構成していた6つの共和国が、それぞれ独立を目指し、
激しく戦いだしたのです。紛争によって370万人が家を追われ、20万人以上の市民が
命を落しました。

6歳の少女・アリッサも紛争に巻き込まれました。
避難していた地下壕からほんの ちょっと外にでたすきに
敵の兵士に捕まり、母親から引き離されて倉庫に閉じ込め
られてしまったのです。倉庫の中では、敵の兵士が暴力の
限りをつくしていました。
アリッサは、恐怖のため、言葉を失い、1年後に母親と
再会できたときには、母親の顔を思い出せないほど、
心に大きな傷を負ってしまったのです。
 

  1995年、クロアチアの戦争がようやく終結した後、桑山さんはNGOの一員として
旧ユーゴスラビアの国々に通い、心に傷を負った子どもたちの心のケアに取り組みました。
はじめの頃は乱暴な、叩きつけるような絵しか描けなかったアリッサも、年を経るごとに
心の傷が少しずつ癒され、12歳になったときには、ようやく、普通の子と同じような、
広がりのある絵を描けるまでになりました。
しかし、まだ、言葉は戻りませんでした。
文字を書くということは、言葉が話せるようになる前触れです。しかし、それを確かめないまま、
NGOの活動の期限がきれ、桑山さんとアリッサは別れ別れになりました。
あれから10年・・・。クロアチアは平和を取り戻しただろうか?
アリッサは言葉を取り戻しただろうか?
戦争でバラバラになっていた一家は再開できただろうか?
長い間、心の奥から消えることのなかったアリッサの消息を確かめるため、
桑山さんは アリッサを訪ねてクロアチアへと飛びました。

 桑山さんの活動の中で大きな比重を占めているのが、東ティモールでの医療支援と
パレスチナ自治区のガザ地区・ラファでの心のケアです。
東ティモールは、東南アジアで最も貧しい国の一つ。独立をめぐる紛争で国民の1/3が
命を落としてしまったという悲しい歴史をもっています。
そのしこりから、今でも暴動が頻繁に起きています。
 パレスチナはイスラエルとの間で60年も紛争が続いています。度重なる戦争、
インティファーダ、自爆テロ・・・。暴力の連鎖が途絶えることがありません。

 映画は、そうした国々を桑山さんとともにまわり、子どもたちの命の輝きを拾い集めています。
フィリピンでは5歳のときに両親に捨てられ、2歳年上の兄と一緒に、懸命に生きている少女・
メリジェーンに出会いました。カンボジアでは、地雷で片手を失いながらも、先生になる夢を
見続けている少年・リエムに、東ティモールの避難民キャンプでは、家を焼かれてもへこたれて
いない2人の少年、バルタザールとレオに出会いました。そんな子どもたちとじっくり向き合い、
彼らの生活を淡々とあるがままに綴ったのがこの映画です。

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